イケメンエリート、最後の独身



 萌絵は放心状態でその場に残された。
 心臓の高鳴る音が膝の上で眠っている謙人の耳に届きそうで、何だか落ち着かない。
 ホヨンの事はあまり気にしないように心掛けていた。
 初対面の時の印象があまりにも悪かったせいで、恐怖感を感じてしまっていた。年下で意地悪で愛想がなくて、きっと、誰に対してもそういう態度なんだと自分自身に言い聞かせていた。
 でも、たまにホヨンが見せる笑顔と優しさは、萌絵の心を混乱させる。
 気が付けば、ホヨンの事が気になっていつも目で追っていた。
 たまにしか見れないホヨンの笑顔と優しさに触れたくてしょうがなかった。
 きっと、ホヨンに恋をしているのかもしれない。
 でも、萌絵は何度も頭を横に振る。これはホヨンの恋愛ゲームに違いない。

…だって、あんなに魅力的なホヨンが私の事を好きになるなんてあり得ない、あり得ない、あり得ない。

 萌絵は心の中で何度もそう呟いた。