イケメンエリート、最後の独身



「僕は一生懸命勉強して偉くなって、必ず日本へ行きます。
日本へ行ったら、必ず萌絵に会いに行く。
そして、もう一度、好きだっていうから」

 萌絵は幸せだった。何度も何度も頭の中でリピートしたせいで一字一句間違いなく覚えている。13歳の少年だからこそ、純粋でその言葉に嘘偽りはない。
 萌絵は泣きそうになった。日本の今の生活に自信が持てなくて、あの頃の生活に戻りたいと思ってしまう自分がいる。

「で? どうするの?
 その少年が大人になるのはあっという間で、その子が萌絵を見つけて迎えに来るのも時間の問題だな」

 萌絵は苦笑いをした。そして、ホヨンを真っすぐに見る。

「その前に私が以前のあの場所に行っちゃうかもしれない。
 東京の生活よりあの頃の生活の方が私に合ってる気がして、最近、そんな事ばかり考えてるから」

 隣に座るホヨンは、萌絵の真っすぐな視線を優しく受け止める。
 ホヨンの細めた目に込められた想いを、萌絵は気付く事はない。