ホヨンは謙人に膝枕をして身動きが取れない萌絵のために、メニューリストを見せてくれた。
「謙人さんが起きるまで、また飲み直そう。
ゆっくり寝ててもらいたいし。
でも、朝までは困るけどね」
普段はあまり笑わないホヨンが笑えば、胸の奥の方がざわざわする。もっと、その笑顔が見てみたいと小さな期待が芽生えてしまう。
萌絵は、甘いカクテルを頼んだ。ホヨンは甘くないカクテルを注文する。
そして、二人は静かな夜に乾杯をした。
謙人が起きないように、細心の注意を払いながら。
「萌絵は恋人はいないの?」
他愛のない会話が途切れた時、ホヨンがそんな事を聞いてきた。
「い、いないです… 残念ながら」
ホヨンは半笑いをしている。その表情が憎たらしくてしょうがない。
「まさか、27年間いないわけじゃないよね?」
今度は萌絵の方が鼻で笑った。そんなわけないじゃんと馬鹿にしたように。
「結婚の約束をした恋人がいました…
でも、多分、フラれたんだと思う。だから、今、ここにいます」
「多分?」



