イケメンエリート、最後の独身



 オフィスの入り口の方では、謙人と清掃業者の佐々木さんが話していた。
 萌絵はそこを通り過ぎて、ホヨンの居るブースへと向かう。帰る事を報告するために。
 すると、ホヨンも帰り支度をしているところだった。

「ホヨンさん、お疲れ様でした。お先に失礼します」

 ホヨンはグレーのダッフルコートを着て、お昼に萌絵が借りた紺色のマフラーを首に巻いている。

「皆、帰ったのかな?」

「はい」

 萌絵はそう返事をした後に、慌てて首を横に振った。

「いや、まだ謙人さんが居ます。
 もう帰るみたいですけど…」

 萌絵は、その言葉が何だか謙人との関係を隠しているような気がして、すぐに訂正をする。

「あの、謙人さんは私の事を心配して、駅まで送ってくれるって言ってくださっていて、なので、一緒に帰る予定なんです」

 萌絵は、急に恥ずかしくなった。

「そうなんだ…
 ってか、そんな事まで報告しなくていいから」

 ホヨンは呆れたようにそう言った。

「じゃ、俺が最後の戸締りをしていくから、二人は先に帰っていいよ」