「分かった…
でも、今日も萌絵ちゃんを家まで送らせてほしい。
心配なんだ。
駅までの道をまだ完全に覚えてないだろ?」
萌絵はとっさに頷いてしまった。確かに、まだ完全に覚えていない。今朝だって、やっとの思いで辿り着けた感じだった。
「で、でも、大丈夫です…
謙人さんも忙しいはずだから」
「ううん、それは大丈夫。
じゃ、今日も昨日みたいに一緒に帰ろう」
萌絵は頷くしかなかった。謙人の優しさは本当に有難い。でも、迷惑をかけたくないという思いも強かった。早く独り立ちをしなきゃこのままでは仕事すら続かない。
謙人は萌絵の返事を待つ事もせずに、その場から居なくなった。
遠くでトオルの声が聞こえた。お疲れ様でしたと言っている。萌絵はスマホで時間を確認する。もう16時が過ぎていた。
オフィスには萌絵とホヨンに謙人、あと、清掃の委託をお願いしている佐々木さんの四人が残っている。
今日のホヨンはまだ帰ろうとはしない。自分のブースに籠って仕事をしている。



