イケメンエリート、最後の独身



 そして、後ろを振り返ると、トオルと謙人が大笑いをしていた。
 萌絵は謙人の笑っている姿を見て心の底からホッとする。謙人には嫌われたくなかった。だって、今の自分には大切な人だから。

 萌絵はオフィスにある小さなキッチンで、食べ終えたカレーのトレイを水で洗いダストボックスに投げ入れた。
 そして、誰もいないキッチンで小さくため息をつく。
 今回のカレーの件といい、自分の不器用さに腹が立って仕方がない。
 仕事はもちろんの事、東京での生活にも向いていないのかもしれないと、落ち込んでしまう。

「萌絵ちゃん、大丈夫?」

 萌絵が振り返ると、キッチンの入り口に謙人が立っていた。

「あ、はい、大丈夫です。
 さっきはすみませんでした…」

 でも、それ以上の事は話せない。そう考えただけで、萌絵の顔が引きつるのが分かった。
 そして、そんな萌絵の挙動を謙人が見逃さないわけがない。謙人は目を細め何かを疑っている。

「何か困った事とかあったわけじゃないよね?」

「な、ないです」

 謙人は萌絵の挙動に気付いている。だけど、それ以上は問い詰めない。謙人さんは優しい人だから。