「ホヨンさん、私、道に迷ったみたいで…
トオルさんに頼まれたお弁当をまだ取りに行けてないんです…」
ホヨンは淡々とした冷たい人間だ。この二日間で萌絵はそう感じていた。仕事の内容は丁寧に教えてくれるけれど、あまり笑顔はないし仕事以外の会話も少ない。たまに疲れた顔でため息をつく仕草が何よりも怖かった。
萌絵の携帯電話を持つ手が震えている。
「今、どこにいるの?」
ホヨンの声は怒っているように聞こえる。
萌絵は手だけじゃなく声までも震え始める。
「…それがよく分からなくて」
「目印はない? 何でもいいから教えて」
萌絵は目に入る全ての物をホヨンに教えた。でも、どの街にもあるありふれた物ばかりだ。特徴のある物が何かさえも分からない。
「そこで待ってて。
携帯は手に持ってる事、OK?」
「は、はい」
萌絵の体はガタガタ震えていた。
緊張からなのか寒さからなのか、よく分からない。



