イケメンエリート、最後の独身



 萌絵は東京の青い空を仰ぎながら、ビル風が吹く細い路地を歩いている。
 でも、もうすでに、今の時点で道に迷っている。
 トオルさんにもらった地図はすごく分かり易かった。でも、肝心なビルからの出口の詳細が何も書かれていなかった。
 あのビルに出口はたくさんあった。東西南北に主要の玄関がある。そして、主要の玄関以外にも小さな出入口が何個もあった。
 トオルさんのメモに書いてある出口は、大きな主要玄関ではない事は分かった。
 萌絵は地図の向きや角度を照らし合わせて、東側の出口に決めた。
 そして、そのメモの通りに真っすぐ歩いているけれど、どんどん細い小道に入っていく。

 萌絵は、一度、立ち止まってみる。そのメモを縦にしたり横にしたりしながら、道が合っているか考えてみた。
 でも、東京を知らない上に方向音痴の萌絵に、この場所の地図が分かるはずがない。
 萌絵はコートを着て来なかった事を後悔していた。ちょっと出かけるだけのつもりだったから、何も考えずにオフィスを出てきた。
 日陰の細い路地に冷たい北風が吹き抜ける。