謙人はもう居ても立っても居られなくなる。
でも、トオルに「心配だから、俺も一緒に行く」なんて口が裂けても言えない。
すると、奥の方から萌絵がニコニコ顔でこっちに歩いてくるのが見えた。
「トオルさん、そろそろ行ってきますね」
トオルは満面の笑みを浮かべてこう言った。
「代金はもう支払い済みだから、もらってくるだけで大丈夫だよ。
今日のランチ代はここにいる謙人のおごりだってさ。
萌絵ちゃん、後でお礼言っといてね」
トオルは謙人の了解も得ずにそんな事をいう。
萌絵のランチなら一万円でも十万円でも喜んで払います~と心は騒いでいるけれど。
「謙人さん、ありがとうございます…」
萌絵のよそよそしさが可愛かった。
萌絵は謙人の心配をよそに、外へ出れる事がよっぽど嬉しいみたいだ。ニコニコ笑いが止まらない。
「それじゃ、行ってきます」
謙人はトオルと一緒に萌絵を見送った。萌絵が大切に握りしめているメモ紙を見て、変な胸騒ぎを感じながら。



