萌絵の表情はホッとした穏やかなものに変わっていく。
そして、萌絵の方から謙人に歩み寄ってきた。その安心しきった笑顔は謙人を信頼している証しだ。
謙人の方が泣きそうになった。そんなに頑張ってここまで来た萌絵を抱きしめたくなる。
「大丈夫だった? 迷ったりしなかった?」
萌絵はにっこりと笑って見せる。
「昨日、謙人さんに教えてもらったとおりにしてみたら、乗り継ぎの時に2本くらい電車を見送ったりしたけど、無事に辿り着けました。
ちゃんと時間内に」
謙人は萌絵を抱きしめたくてたまらない。
「よかった。俺も気になって、ここでちょっとだけ萌絵ちゃんの事待ってたんだ。
萌絵ちゃんの姿を見つけた時は、本当にホッとしたよ」
今日の萌絵はグレーのニットのワンピースに黒のコートというコーディネートだ。萌絵が着ているものは全てが可愛く見える。だから、今日の萌絵も最高に可愛かった。
いつの間にか、違う意味で、謙人と萌絵は親友になっていた。その事実が、のちの謙人を苦しめる事になるけれど。



