「あ、そうみたいだね…」
謙人の心はこれだけで動揺している。初めて恋を知った少年よりも純粋過ぎて、いい加減自分自身が嫌になる。
トオルは謙人に目配せをして「行こう」と誘ってきた。
謙人は首を横に振り、トオルだけ行かせた。
実は、今朝、謙人は萌絵と一緒に出社してきた。一緒にというと聞こえがいいけれど、本当のところは偶然を装って一緒に出社したのだ。
普段は車で通勤する謙人なのに、今日は電車で会社へ向かった。EOCの入っているビルと直結している駅、そう、昨日、萌絵が必死に写メを撮っていた入り口でさりげなく萌絵を待った。
本当は萌絵の住むことだまマンションまで迎えに行きたかった。でも、その衝動は自制心で必死に抑え込んだ。
萌絵がいつ頃に出社をするか分からないため、結構早い時間から駅をウロウロしていた。
そんな中、人混みに萌絵を見つけた。萌絵は一目散に謙人の待つ入り口目指して歩いている。
「萌絵ちゃん!」
萌絵は自分の名前が呼ばれる方に振り返る。そして、謙人を見つけると泣きそうな顔で笑った。
「謙人さん!」



