「え、謙人、どうしたんだ? 今日もオフィスに出てくるなんて」
謙人がカフェスペースでコーヒーを飲んでいると、ゆっくりと出社してきたトオルが驚いて声をかけてきた。
「久しぶり、二週間ぶりかな」
謙人はあれこれ事情を説明するのが面倒くさかった。もちろん、本当の事情はまだ誰にも話す気はないけれど。
「鎌倉の家から離れられないんじゃなかったのかよ」
謙人は困ったように微笑んだ。確かに本当に困っている…
「しばらくはここで仕事をする予定。妹夫婦に鎌倉の家は占領されてるんだ」
…される予定。それは、まだ先の夏休みの話だけど。
「そうなんだ、それはそれで大歓迎。
ホヨンに色々指導してもらいたい事もあるしね。明智君一人じゃ忙し過ぎるなって思ってたところなんだ。
俺も仕事も家庭も大忙しだから、謙人が居てくれるならすごく助かるよ」
謙人は苦笑いをした。
そうなる事を避けるために鎌倉に籠っていたのだから。
トオルはすぐに奥のフリースペースに目を向けた。
「新しい女の子が入ってきたんだよね?」



