萌絵の家は一体どこなのだろう?
謙人の時計では10分は確実に過ぎている。
萌絵はコンビニにもどこにもよらずに一目散に歩いているのに、中々家に辿り着かない。
謙人は近づき過ぎないよう注意をしながら歩いている。でも、心配する気持ちが強過ぎてあっという間に距離が縮んでしまう。その度に、建物の陰に隠れて萌絵の事を見守った。
そんな時、たまに冷静になる自分にゾッとする。
“萌ちゃんが好き過ぎて、幼稚園児のくせにストーカーみたいだったのよ”
謙人は心の中で必死に言い訳をした。
今日、一日で起きた目まぐるしい心の変化に戸惑っている。
昨日までの自分なら、絶対にこんな事はしない。もしこういう事をしている奴がいたら、すぐに警察に通報する。
そんな事を考えながら、辺りをキョロキョロ見回した。
萌絵は相変わらず黙々とひたすら歩いている。
というか、もうすでに20分は超えている。居ても立ってもいられなくなった謙人が声をかけようと思ったその時に、萌絵は古びたマンションの中に入っていった。
ことだまマンション??
ことだま? 言霊か?
謙人はマンション名に疑問を抱きながら、その建物の外観や周辺をチェックする。
オートロック式の共有玄関はちゃんと機能しているのか分からない。中のエントランスも照明がついているのに、どんよりと暗すぎる。



