イケメンエリート、最後の独身



 謙人はベッドから起き上がれずにいた。
 昨夜、調子に乗って飲んだレモンソーダのせいだと思っていたら、病院で胃腸にくる風邪だと診断された。
 謙人はやっとの思いでマンションへ帰り、それからずっとベッドで寝ている。
 不思議な事に、風邪だと言われた途端、悪寒が始まりあっという間に熱が出始めた。本当に風邪だったということだ。
 熱のせいで、横になっても頭がズキズキして眠る事ができない。頭だけじゃなく、お腹も胃までも痛くてたまらない。
 そんな時に考えるのは萌絵の事ばかり。
 心身ともに弱っているせいか、気持ちを強く保つ事ができずにいる。
…三日後には旅立ってしまうのに、俺は何をしてるんだろう。
 頭がぼんやりしているせいか、涙が溢れて止まらない。
 ここにきて、素直な自分と向き合うなんて最悪だった。
 萌絵と離れたくない。一分でも一秒でも…
 ずっと逃げていたこの難題に、顎下からパンチを食らったみたいだ。
 きっと罰が当たったに違いない。
 萌絵とこれから先の事をちゃんと話し合おうとしなかった俺のせい…
 謙人の涙は止まらない。
 じゃ、俺はどうすればいい…?
 そんな問いかけばかりを繰り返し、いつの間にか泣きつかれて眠ってしまった。もう時間はそんなに残されていないというのに…