「ほら、永遠の別れじゃないんだから、行くよ」
謙人は人目を気にせず、萌絵の肩を引き寄せる。
「いってらっしゃい」
明智さんとホヨンが大きく手を振ってくれる。
謙人は後ろ向きに大きく手を振った。
萌絵はそんな謙人の胸の中に包まれて、ただ真っすぐに歩いていく。
いつか、ホヨンに教えてもらったホヨンのおばあちゃんの言葉を思い出しながら。
“たった一度きりの人生に何ものにも代えられない一番大切なものが二つやって来る事がある。
そんな時には一つに決めなくていい、二つとも自分のものにしなさい”
萌絵は謙人の腰にそっと腕を回す。
もしこの世に本当に神様がいるのなら、百回でも千回でもお礼を言いたい。
こんな欲張りな私を許してくれて本当にありがとうと…
そして、謙人は、萌絵のさりげない動きを決して見逃さなかった。
行き交う人混みの中、誰にも気付かれないように、萌絵の頬に優しくキスをする。
“愛してる…” と囁いて。
そして、おまけの話…



