イケメンエリート、最後の独身



「席をアップグレードしといたから、後で、今、持ってるチケットを変更に行こう。
そして、飛行機の中で俺のたくさんの言い訳を聞いてほしい。
 ゆったりとしたシートでくつろぎながら、ね」

 あまりにも色々な事が起こりすぎて、萌絵の思考回路はショートしていた。ドイツ行きの飛行機に謙人も一緒に乗るなんて、そんな事、考えてもみなかった。

「萌絵ちゃん、元気でね。謙人さんも」

 それでも時間は流れて行く。
 明智さんは萌絵と謙人に挨拶をして手を振っている。
 ホヨンは二人をただ見つめるだけだった。その瞳は今も潤んで見える。

「二週間後には東京に戻ってくるよ。
 クライアントと約束をしちゃってるからね」

 面倒くさそうにそう答える謙人を見て、二人は微笑んだ。
 萌絵は謙人にしっかりと肩を抱かれて引き寄せられて、寂しいとか悲しいとか感慨にふける暇もない。

「行くぞ」

 謙人にそう言われ、萌絵は謙人の肩の中から抜け出した。

「明智さん、ホヨンさん、本当にありがとうございました。
そして、EOCの一員として、これからもどうぞよろしくお願いします」

 萌絵は深々と頭を下げる。
 本当にそう思った。
 ほんの短い間だったけれど、この二人にはお世話になりっぱなしだった。たくさん助けてもらい、そして支えてもらった。