イケメンエリート、最後の独身



「謙人さん、それって…
 本当ですか…? 冗談とかじゃなくて?」

 謙人は明智さんの方を見て、そして、ホヨンの方を見た。

「ホヨン君…
 ホヨンにしてみればこの選択が正解なのかは分からないけど、これが俺のやり方だ。
 心の声の言う通りにする。
 ホヨンの知ってる昔の謙人は、もうここには居ない。
 萌絵ちゃんが近くにいないと何もできない、そんな前田謙人に成り下がったっていう事だよ」

 謙人は自虐しながら楽しそうに笑った。

「そんな事ない…
 謙人さんは、やっぱり俺の尊敬する人間です。
 それに、俺にとってもこれが正解なんだと思う。
 っていうか、これしかないです」

 ホヨンの目が潤んで見える。
 ホヨンにとっても、今日は価値のある日になったのかもしれない。ホヨンの心の内は誰にも分からないけれど。

「謙人さん、本当にいいんですか…?」

 萌絵はそれしか聞けなかった。
 本当にいいの? こんな私のために…

「それはこっちの台詞だよ…
 早くには伝えられなかった。
 萌絵ちゃんの事だから、俺の決めた選択を受け入れてくれないと思った。
 だから、出発する直前に伝える事にしたんだ。
 色々、不安な気持ちにさせてごめん。
 これで許してほしい」

 謙人はそう言うと、ポケットから二枚のチケットを取り出した。