イケメンエリート、最後の独身



 明智さんはその事には深く触れない。ただ、淡々とメッセージを伝えるだけだった。
 萌絵はすぐに謙人の事を思い出す。でも、謙人の方から離れるのなら、それはそれで仕方のない事。萌絵は明智さんに笑顔で頷いて見せた。

「明智さん、謙人さんを見かけました?」

 ホヨンの顔はまだ険しかった。
 色々な意味で落胆しているように見える。
 萌絵はスマホで時間を確かめる。
 ちょっと早いけれど、もう保安検査場へ入ってしまいたい。この微妙な空気感に息が詰まりそうで、冷静な自分を保つ事が難しかった。
 萌絵がバッグの中からQRコードの付いたチケットを取り出そうとした時、ホヨンの大きな声が聞こえた。

「よかった、謙人さん、遅いですよ」

 萌絵は心臓が震えた。
 それは喜びの震えではない。
 謙人の最初に発する言葉が怖くて耳を塞ぎたかった。萌絵は謙人の方を見る事ができずに、ずっとバッグの中を探っていた。
 すると、謙人が萌絵の肩を引き寄せる。

「もう、そんな時間? よし、じゃ、入ろう」

 いつも通りの謙人がいる。萌絵はそんな謙人の顔を睨みつけた。