「萌絵、謙人さんは?」
萌絵はチェックインカウンターにスーツケースを預け、ホヨン達と待ち合わせをしている場所へ行ってみると、開口一番、ホヨンがそう聞いてきた。
ホヨンのその問いに涙が溢れそうになる。
萌絵は困ったように肩をすくめた。
「私の送別会の後に体調を崩しちゃって、病院で胃腸風邪の診断がついて、しばらく鎌倉の家に帰ってるみたい」
「それで?」
ホヨンは厳しい口調でそう聞き返す。
萌絵は明智さんの姿を見つけ、ホヨンに目配せをする。この話題にあまり触れてほしくない。話したところで涙しか出てこないから。
「萌絵ちゃん、いよいよだね」
明智さんのいつもと変わらない笑顔に心が癒される。特に今日は、いつも以上にその瞳に愛情を感じる。もしかしたら、明智さんは何もかも気付いているのかもしれない。
「トオルさんからメッセージを預かってる。
萌絵ちゃんの仕事柄、たくさんの人に愛情を振りまかなきゃいけないけど、時には、本当に大切な人にだけ愛情を一人占めさせてあげてほしい。
きっと、そいつは寂しくて泣いてるはずだから。
というメッセージ。ちょっと意味深だけど」



