イケメンエリート、最後の独身



 謙人はその冷水を一気に胃の中に放り込む。この荒れ狂う感情に流されないよう、自分の理性を呼び覚ますために。

「じゃ、謙人さんは萌絵の事をどうしようと思ってるんですか?
 俺にとって、見本になる行動に出てくれるんですよね?」

 謙人はホヨンにそう矢継ぎ早に質問をされても、何も返す言葉が見つからない。
 こんな間際になっても、まだ何も考えていない。いや、考えるのを避けていた。あとわずかな萌絵との時間をしんみりと過ごしたくなかったし、その現実に向き合うのが怖かった。

「ホヨン君に言う事じゃないだろ?
 それは俺と萌絵ちゃんとの問題だから…」

 ホヨンはキッとした目で謙人を睨む。
 ホヨンの気持ちはよく分かった。
 萌絵の全てを託すには、謙人はまだ完璧な人間じゃない。特に今の謙人は、萌絵の事に関しては全てが手探り状態だった。何が正解なのか全く分からない。そして、そんな謙人の状態をホヨンは気付いている。

「俺が若いっていうのなら、若い奴にしかできない事をするだけです。
 でも、俺は謙人さんの事だって尊敬してるし憧れてる。
 そんな俺をがっかりさせないでください。
 最悪、俺は謙人さんから萌絵を守る事を選ぶかもしれない。
 そうならない事を願ってます」

 ホヨンの強気な言葉は謙人の心に真っすぐに刺さった。
 萌絵が旅立つまで、後四日…
 俺は一体どうしたいんだ…