ホヨンの表情に何も企みがない事は分かった。
でも、謙人の気持ちは穏やかではない。嵐の渦の中にいる。萌絵の心を惑わすそんなホヨンに対して、謙人は全く余裕がなかった。
「その事に関して、ホヨン君に話さなきゃダメかな?」
ホヨンは困ったように俯いた。
「謙人さんが萌絵の事を本気で考えていないのなら、俺にも色々な想いがあるので…」
謙人は面倒くさそうにホヨンを見る。怒りに似た感情が謙人を支配する。そんな中、斜め向こうに座る萌絵と目が合った。心配そうに見つめる萌絵の目を見て、謙人は冷静さを取り戻した。
「どういう想い?」
「謙人さんがはっきりしないのなら、萌絵を自分のものにします」
謙人は吐きそうになった。
萌絵が他の誰かのものになる?
そんな事は世界がひっくり返ってもあり得ない。謙人は目を細めてホヨンを見た。
…お前は俺にケンカを売ってるのか?
と、心の言葉を打ち砕きながら。
「今回、萌絵は仕事を選んだけど、女性としての幸せも望んでいる。
俺は…
結婚とかそんな事じゃなくて、萌絵の心の支えになってあげたいって思ってます。知らない国で働くって、どうやったって孤独感から逃げる事はできない。特に、萌絵は、そういう面では不器用な女の子だから」



