イケメンエリート、最後の独身



「謙人、本当に萌絵ちゃんを愛しているのなら、絶対に手離すなよ。
 気持ちの問題だけじゃない。物理的な事からも逃げるなよ。
 俺の助言はそれだけ」

 謙人は氷が溶けて薄くなったハイボールを一気に飲み干した。
 恋愛初心者の謙人にとって、トオルの助言は耳が痛くなるほど鬱陶しかった。二人の未来に真剣に向き合わなければいけないという事に、胃が痛くなり始める。
 萌絵はホヨンと話した後、今度は明智君と話している。そして、その次に李君が控えていた。萌絵が主役の送別会だからこうなる事は想定内だけど、どうしても気持ちが落ちてしまう。
 そんな謙人の隣にホヨンが座ってきた。

「謙人さん、大丈夫ですか?」

 ホヨンのいきなりの上から目線の言葉に、謙人は余計に苛つき始める。
 謙人は小さく息を吐いて、ホヨンの方を見た。

「大丈夫?って何が?」

 謙人は優しくそう聞いたつもりだが、きっとそんな風には聞こえていない。
 ホヨンは肩をすくめて笑った。
 そんな余裕の笑顔に謙人の胃は更にキリキリ痛み出す。

「萌絵が日本を離れてしまう事ですよ。
ちょっと心配してます」