“どこらへんですか?”
“もう着くよ”
“OKです 皆にそう伝えておきます”
謙人はコンビニで買った缶コーヒーを飲み干して、自分自身に気合を入れる。もう行くしかない。
謙人が料亭の入り口に着くと、スタッフが待ち構えていた。そして、すぐに庭園の方へ案内をする。
その間、謙人は何度も深呼吸をする。
萌絵を好き過ぎる狂気にも似た感情を心の隅っこへ追いやるしかない。それが可能であれば、の話だけれど…
謙人が庭園に入ると、すぐにホヨンが迎えに来た。
「萌絵が寂しそうですよ」
初っ端から、ホヨンの萌絵という呼び捨てに鎮めたはずの心が苛つき始める。謙人はとりあえず軽く笑みを浮かべ、ホヨンの言葉は無視をした。
「謙人、こっちこっち」
謙人はトオルにそう呼ばれ、萌絵の隣を通ってトオルの横に座った。
微妙に萌絵と距離がある。
謙人はトオルに遅れた理由を話しながら、満開に咲き誇る桜の木を見上げた。ライトアップされた桜の花が、本当に美しい。
桜の木の下にセッティングされたテーブルには、お花見にふさわしい色とりどりの料理が並んでいる。



