今夜は東京の夜空に星が見えるほどの快晴だ。風も弱く陽が落ちてもそんなに寒さは感じない。
謙人は未だに気分が乗らずにいた。
萌絵の送別会は、有名なホテルの庭園を貸切って行われている。謙人はクライアントの都合で夕方まで仕事をしていた。
タクシーの中で、時計を見る。もう7時半を過ぎている。きっと、萌絵のスピーチが終わって乾杯をしている頃だ。
「あ、すみません、そこのコンビニに寄ってもらっていいですか?」
時間をいかに潰すかそればかり考えていた。
あのEOCのメンバーの中で、萌絵だけを見つめるわけにはいかない。
謙人の独身で自由の身というプライドが、もうすでに木っ端微塵に砕け散っている事が皆んなにばれてしまう。
別にそれでもいいじゃないか…
でも、あと少しで萌絵が旅立ってしまう切なさを、その場にいる皆はすぐに理解する。そして、謙人が傷心の日々を過ごすという事を。
謙人はこの同情を買うシチュエーションがたまらなく嫌だった。
純粋な恋愛をするには歳を取り過ぎているし、遊び人というイメージが誰よりも強過ぎる。
だけど、自分自身は中学生レベルの初恋に身を投じている。
その恥ずかし過ぎるギャップを、あのメンバーに晒したくない。
そう思えば思うほど、送別会の会場へ足が向かない。
そんな中、ホヨンからメッセージが入った。



