今日の会議に、ホヨンは参加しなかった。奥のフリースペースで萌絵の相手に忙しいのだろう。そう考えるだけで、謙人は元気が出なくなる。
すると、スマホにメッセージが入った。元恋人の浩介からだ。元恋人だけど、今は友達としていい関係を築いている。
“今日は水曜日だから東京の家に泊る日だろ? 一緒に飯どう?”
いつもの水曜日なら即OKの返事を送るのに、今日はそんな気分じゃない。
“ちょっと保留”
そう返信して電源をオフにした。
そして、今日はどういうわけか仕事がはかどった。オフィスに居る理由を作るためには、オフィスは居心地がよくて仕事がはかどる事を皆にアピールしなければならない。
ついこの間まで、鎌倉の家でしか仕事ははかどらないなんて豪語していた自分だから。
「謙人さん、まだ居ます?」
もうそろそろ、皆の帰宅時間だ。帰宅時間といっても何時とかは決まっていない。自分の好きな時間に来て好きな時間に帰ればいい。
謙人のブースに顔を覗かせた明智君も、もう帰る準備はできていた。
「もう少し居るつもり。明智君、先に帰っていいよ」
明智君は笑顔で頷いて、一言付け加えた。



