謙人に本気で嫌われたのかもしれないと思い始めた萌絵は、何も前へ進めずにいた。
この日は、久しぶりにホヨンがオフィスに顔を出した。
ホヨンは萌絵の定位置となっている窓際のスペースに椅子を持ってきて、萌絵の隣に座った。
「出国の準備は進んでる?」
ホヨンの低い深みのある声に、萌絵の心は少しだけときめく。
「準備も何も、まだ東京での生活自体が始まってなかった状態だったので…
それに東京での住まいは一年はそのままにしていていいってソフィアが言ってくれて、本当に助かっています」
「ソフィアは萌絵にベタ惚れだからね」
萌絵は困ったように肩をすくめた。ソフィアが自分の事をそんな風に思ってくれているのなら、とても光栄な事だ。
「俺は少し寂しいけど…
これから萌絵の事いっぱい知りたいって思ってたからさ」
ホヨンの目元が穏やかに笑っている。



