イケメンエリート、最後の独身



「じゃ、ホヨン君は年上の萌絵さんを更に大切にしてください。
 楽しい時間が過ごせるようにね」

 謙人は明智君の人柄の良さに感心していた。
 それにしてもホヨンのやつ、萌絵ちゃんに対してどういう口の利き方なんだ。
 謙人は会ったばかりの萌絵の事が気になってしょうがない。

「それじゃ、ホヨン君、萌絵さんにここのオフィスの案内をしてあげてください」

 ホヨンは明智君にそう言われると、萌絵の肩をつつき行こうと声をかけた。
 そんな二人の姿に、謙人の中で得体の知れない感情が爆発しそうになる。
 …嫉妬か?
 謙人は二人から視線を外し、一度、小さく息を吐いた。

「謙人ちゃん、どうしちゃったのかな?」

 誰も居なくなったカフェスペースで、映司がニヤニヤしながら謙人に擦り寄ってくる。

「な~んか、謙人ちゃんらしくないな~」

 謙人は映司の性格を一番よく分かっている。分かっているからこそ、今日のこの場所に一番いてほしくなかった。
 映司のしつこさには本当に腹が立つ。相手が嫌がっていようがお構いなしだ。