イケメンエリート、最後の独身



「いいですよ」

 萌絵は謙人を抱きしめたまま、そっと背中をさすってくれる。

「じゃ… キスしてくれる?」

 萌絵はしばらく考えているようだった。でも、背中をさする手はそのままだ。そして、萌絵は謙人から少しだけ体を離して、謙人の顔を見つめる。
 萌絵は優しく微笑んで、謙人のくちびるにくちびるを重ねた。

 マリア様かと思った。萌絵の微笑みは謙人の全ての感情をオフにする。そして、萌絵の柔らかいくちびるは謙人の中でひしめき合う様々な想いを一瞬で消し去った。
 謙人は萌絵のピンク色のオーラに飲み込まれる。その甘い空間は謙人がずっと憧れていた優しさと幸せに満ちた世界だった。
 萌絵のぎこちないキスに息ができないほど溺れてしまっている。

「け、謙人さん… もう、落ち着きました…?」

 落ち着くはずがない。
 謙人はあり得ないほどの雄の感情に支配されていた。萌絵がくちびるを離した途端、ピンク色の世界を手離したくない獣が起き上がった。
 でも、その獣の感情を必死に抑えつける。