イケメンエリート、最後の独身



 謙人の目に飛び込んできたのは、無数のお墓が立ち並ぶ墓地だった。所々にセンサー付きの電球があるせいで、ぼんやりとした明かりが古びた墓を浮かび上がらせている。
 謙人はゾクゾクが止まらない。こんな夜中にこんなものを見るなんて予想もしていなかった。

「萌絵ちゃん、隣は墓地?」

 疑問形にしなくても、間違いなく、完全な墓地だ。

「はい、そうなんです…」

 萌絵はまるで他人事のように微笑んで、開け広げたカーテンをしっかりと閉じた。そして、謙人の右手を握る。
 キスをするには、最高の立ち位置だった。三センチほど顔を動かせば、萌絵とキスができる。そういう精神状態であれば…

「私が悪いんです。
 この物件は全て不動産会社の人にお任せして、私自身、出向いて見る事すらしなかったので…
 でも、不動産会社の人は隣にあるのはお寺だと言ったんです。
 確かに、奥の方に小さなお寺はあるんですけど、しょうがないですね…」