謙人は下を向いている萌絵をぼんやり見ていた。
ホヨンと恋をしたっていいじゃないか…
謙人が萌絵の事を好きでたまらないとしても、それは萌絵にとってはどうでもいいこと。
だけど、諦めきれない自分自身がいる。諦めるわけにはいかなかった。だって、謙人にとって初めての恋心だから。
「好きとか、そういうのさえまだ分からないんです…
あの時のキスは、きっと、ホヨンさんにとっては友達の印みたいな軽いもので、何も意味を持たないキスだと思います」
そういう萌絵は泣きそうになっている。
自分の気持ちと折り合いがつかないみたいに苦しんでいるように見える。
でも、それ以前に、謙人はあのキスが幻じゃなかった事にショックを受けていた。



