謙人は、ジェラシーという渦の中に飲み込まれそうになっていた。
記憶の中のホヨンに萌絵を取られそうで、冷静を保つ事ができない。萌絵は目の前にいるのに何故だか遠くに感じてしまう。
「萌絵ちゃん… 好きな人とかいるの?」
謙人の質問は突然でストレート過ぎた。
萌絵は顔を赤くしてすぐに下を俯いた。その仕草は完全に“はい”と言っている。
「地元の元彼の事は吹っ切れたって言ってたから、もしかしてホヨン君?」
謙人は自分の事を最低だと思った。
自分の中で色々な感情が交差して、口から出てくる言葉を冷静に選別することができない。でも、きっと、それが本音だからしょうがない。
「ごめん…
二人の話を聞いていたわけじゃないんだ。
本当に酔っぱらってたし、二人が残って俺の面倒を見ていてくれた事さえ分からなかった。
でも、何となく目が覚めるぼんやりとした中で、二人がキスしているのが見えた気がした。おぼろげな感じだったから、もしかしたら夢なのかもしれないんだけど。
ごめん、何だかすごく気になってて…
でも、気になる時点で、俺自身がどうかしてるんだよな…」



