イケメンエリート、最後の独身



 謙人は、まず、部屋の狭さに驚いた。
 入ってすぐ正方形のリビングがあって、奥に位置する一つの角に小さなキッチン、シャワールーム、その反対の角にトイレがある。ベランダはカーテンで隠れているのでよく見えないが、狭いのは間違いない。
 そして、フローリングが硬過ぎる。これはコンクリートにシートを貼り付けているだけだ。謙人は違う意味で頭痛がし始めた。
 でも、部屋はとても綺麗に片付いている。

「この間、やっと、注文していたテーブルとソファがきて、それで、こうして人を招く事ができるようになりました」

 壁紙が新しいせいか、部屋の中はまともに見えた。でも、キッチンのシンクや給湯器はいつの時代のものかと思うほど古臭い。
 天井も低いし窓のサッシも一枚ガラスの薄いものだ。エアコンをフルに使っているけれど、中々温まらない。
 謙人はコメントを控えていた。
 このことだまマンションの感想を一言話し始めると止まらなくなるのは分かっている。
 幽霊だってどこかに隠れているかもしれない。謙人は緊張しながら部屋の角をチェックする。
 大丈夫、幽霊はいない。
 謙人はバカバカしいと思いながら、本気で怖がる自分にげんなりしていた。