イケメンエリート、最後の独身



「あの、すみません… 冷たいお水をもらえますか」

 萌絵の気配に気付いたスタッフは、すぐにお冷を準備して謙人の元へ急いだ。

「謙人さん、起きた?」

 ホヨンが萌絵に近づいてそう聞いてくる。

「はい」

 萌絵はホヨンの声を聞いただけで胸がときめいてしまう。
 お酒のせいだと思いたい。そうじゃないと完全にホヨンに恋をしてしまう。
 高さのあるスツールに腰かけていたホヨンは、そこからぴょんと飛び降りる。そして、萌絵の腰に手を当てて行くよと囁いた。

 謙人はホヨンを見て少し驚いた様子だった。そして、明らかに不機嫌な顔になる。

「謙人さん、大丈夫ですか? 顔色が真っ白ですよ」

 確かに、謙人はまだ具合が悪そうに見える。

「他の皆はもう帰ったんだ?」

 謙人はそう聞きながらスマホで時間を見て、小さくため息をついた。

「僕がちゃんと謙人さんと萌絵さんを送って帰りますので、大丈夫です」

 明智さんのそう頼まれていたホヨンは、萌絵の目を見ながらそう言った。萌絵も小さく頷いた。