“今日も見とる。”

練習中、先輩や顧問の目を盗んで図書室を見上げるのがすっかり習慣になっていた。

理由は1つ。

あの子がおるから。

あの子が文学部で図書室で活動しとることを知ってから、もしかしたら見えるかもという淡い気持ちで見上げるのが習慣になってからあっという間に時が過ぎた。

気がつけば夏の大会が終わって3年生は引退していた。

あの子は6月頃から窓際の席で毎日グランドを見ている。

これは俺の希望的思いかもしれないけど、あの子は野球部の俺を見てる…気がする。

“章太郎!何見てんの?”

忠弘はこっそりあの子を見てた俺に勢いよく突進してきた。

こいつはいわゆる幼馴染で小学校の頃からバッテリーを組んでいる。

馬が合うような合わんようなそんな変なやつ。

忠弘は俺の視線の先を見上げた。

“あ、あの子、桜井さんやん。”

忠弘は眩しそうに見上げた後、俺の顔を見てニヤニヤした。

“ふーん。へー。章太郎がなぁ。”

ニヤニヤする忠弘にムカついて軽く腹パンを入れる。

忠弘は大袈裟に反応した。

先輩に注意され、ろくに否定できなかった。

まぁ、否定できひんけど…。