「三上さーん!」


「……え?」


「三上さーん! こっちこっち! 奈子ちゃんが呼んでるよー!」



そんな調子のまま、大雅と奈子ちゃんが一緒に登校しているのを初めて見かけた日から二週間が経過した、ある朝。


登校したばかりの教室の中で、クラスメイトから呼ばれて顔を上げた。


廊下にはついさっきも見た奈子ちゃんの姿が。



「あれ、奈子ちゃんだ」


「斉藤さんが三上さんに用事?」


「なんだろうね」


「え、実は仲良かったとか?」


「意外ー、タイプ真逆じゃない?」


「いや、友達なら普通に呼ぶと思うから違うんじゃない?」


「そっか。じゃあなんだろうね」



クラスメイトたちの好奇な視線と言葉を浴びながら、「ちょっと行ってくるね」と紫苑に断りを入れてわたしは奈子ちゃんの元へ行く。



「えっと、三上ですけど……」


「わたし、六組の斉藤奈子。ちょっといい?」


「あ、はい」



言われるがまま奈子ちゃんの後ろをついていくと、同じ階の廊下の突き当たりにある空き教室に入った。


少し埃っぽい教室の中で、奈子ちゃんはわたしに向き直る。


すると一瞬で纏う雰囲気が変わったような気がして、怖くなって身震いした。



「……大雅くんから聞いたんだけど。毎朝付きまとってくる女ってあんたのことだよね?」



声が、いつもより低い。


喋り方が、いつもと違う。