「芽衣っ……」


「……紫苑」


「芽衣、落ち着いて? あんなのただの噂でしょ。本当に付き合い始めたのかなんてわかんないじゃん」


「でも、大雅否定してないって……」


「芽衣……」



大雅がモテるのは、昔からのこと。


高校に入ってからさらに人気が出始めたのはわたしも知っている。


だけど、それでも今までそんな噂が流れることすらなかったのに。



「大雅に、彼女……?」


「芽衣、しっかりして。まだそうと決まったわけじゃない」



OKしたってことは、少なくともその子に嫌悪感は無くどちらかと言えば好意の方が大きいということだろう。



「そしたら、わたし……」



ただ、邪魔なだけじゃん……。


呟いて、ショックで吐き気がしてきてトイレに駆け込んだ。


その日はそのまま教室に戻ることができず、紫苑が保健室に連れて行ってくれてベッドで横になっていた。


紫苑がそのあと教室に戻ってわたしのお弁当と一緒に荷物をまとめてくれて、放課後保健室まで届けてくれて一緒に帰る。


傘にしたたる雨音が、わたしの今の気持ちを代弁してくれているかのようだった。



「具合はどう? 少しは寝れた?」


「うん……とりあえず吐き気は落ち着いた。かな」


「そっか。良かった。家まで送ってくからゆっくり歩いて帰ろう」


「うん。紫苑、いつもごめんね。迷惑かけて……。本当にありがとう」


「何言ってんの。迷惑なんかじゃないよ。芽衣はわたしの一番の友達なんだからこれくらい当たり前でしょ。それに言ったでしょ? わたしが芽衣を守るって」


「紫苑……ありがとう」



紫苑の優しさに救われる。