胸をはって、先輩の顔を見ながら演説終了。

 すると、先輩は顔を覆って、ため息を吐いた。

 「奈由。お前の言いたいことはよーくわかった。で、俺としては認めてやる代わりに、婚約をして公にしたいんだがどうだ?」
 
 「どうして?今だって婚約してるようなものだよね。」

 「いや、二人の間でしている将来の約束ではない。公にお前が婚約者だと言うんだよ。」
 
 「嫌。今は嫌です。」
 
 「なんで?」
 
 「先輩の婚約者って言うと、コネだと思われるし、入ったところなのに色眼鏡で見られるし、ぜーったいに嫌。」

 横をぷいと向いて言い切った。

 ところが……ふと先輩を見ると、すごい形相で睨んでる。
 
 「……どうして怒るの?」

 「……お前は俺の気持ちを考えたことがないようだな、やはり。今まで野放しにしてきたせいか?仕事に自信がついて、年頃になり本当最近綺麗になった。爺だって、家の使用人だって皆口をそろえて心配していたが、榊のあの目。あいつ、仕事だけじゃない。お前にまるごと惹かれてるんだ。今回本当に俺はお前を縛る決意をした。」

 どうしたの先輩。いつだって、私のしたいこと応援してくれていたのに。変だよ。

 「……先輩は、いつも私の人生を生きろって言ってくれた。急に変です。さっきも言ったでしょ。私は先輩が一番大切です。先輩が大好きなのに。縛るとか嫌いになる。」
 
 先輩は身体を起こし、そおっと私を抱きしめた。
 
 「奈由。それなら、婚約発表は半年くらい待ってやる。準備もいるしな。ただし、榊にも言っておくが、お前の仕事は俺の会社関係の記事を中心とさせる。ウチの広報を通して記事を書かせるから。それだけは譲れない。結婚したら自由に書かせてやる。お前、俺の仕事知らなすぎだ。いずれ、俺の嫁になるなら最低限グループについてもう少し知識をつけろ。仕事せずにそういう勉強を本来なら嫁入り前にさせるんだぞ。お前は仕事しながら学んでいけ。」

 確かに。言われてみればその通り。