愛しているから 好きにしろ

 
 急いで外に出ると、どこに行ったら泣けるだろうと必死で考えた。

 川沿いの土手の下なら誰も来ないかも知れない。

 タクシーに乗ると、川の近くのところまで指定して、そこで下ろしてもらう。

 日が暮れてる。

 ゆっくり土手を降りて、橋のうえから街灯が水面を照らして光ってる。

 下まで来るとしゃがんで座った。

 涙が出てきた。声を上げて泣く。

 こんなことになるとは思ってもいなかった。傲慢だった。

 自分だけ先輩に気を取られて、晴人にそういうことが起きるなんて思ってもいなかった。

 罰が当たったんだ。


 携帯が鳴っている。

 詩乃だ。

 「奈由?大丈夫?今どこ?」

 「グスッ。ズッ。川沿いの土手の下。」

 「泣いてるのね?晴人から聞いた。心配してる。すぐ行くから、どの辺?」