「奈由、遅かったね。」

「迷った?」

 親友の詩乃と晴人がこちらを見て言った。

「うん、ドアにぶつかった人と話してたら、ちょっと遅れたー」

 ふたりは顔を見合わせ吹き出した。


「何言ってんの、相変わらず天然、奈由」

 むむっ。そんなことないもん。晴人はすぐにばかにする。

「ほら、また膨れっ面して、面白すぎ!」

 授業の鐘が鳴り、席についた。


 放課後。
 
 詩乃のバイトは、彼氏も働いているイタリアン系のファミレスになったらしい。

 彼氏はこっちのキャンパスにいるから、バイト先も紹介してもらったみたい。

 いいなー。遠距離でも続いていた彼氏は高校のバスケ部の先輩。

 大学も同じ所に入るとか、どこまでラブラブなんだよ。


 しかも、晴人までバイト決めてきたらしい。

 晴人は、教師志望なので塾講師だって。

「奈由はどうすんのー?」

 詩乃がこちらを向いた。

「うーん。バイトしないとまずいしなあ。でも塾はパス。私には無理。」

 晴人がうんうんとうなずいてる。ひどくない?