とにかく、香は俺の好みではない。

 そこへ、ふわふわした奈由が現れた。

 最初は面白い奴という感覚だったが、あいつと話すときはいつも笑顔でいれる自分に気づいた。

 そして、物怖じしないところも気に入っている。構えるところがない。ズバズバ思ったことを直接言ってくる。

 俺の周りはそういう人間が本当に少ない。

 腹黒いと言うと言い過ぎだが、言葉の後ろを常に考えるような連中ばかり。

 奈由は祖母に似ているかも知れない。

 祖母も天然で愛らしい人だ。反面ハッキリするところもあり、あの祖父や親戚相手に立ち回っているが嫌みがない。

 持ち合わせた雰囲気がなせる技だと思う。

 奈由がそういう女だと直感で感じた時に、自分のものにすべき女がやっと現れたと思った。

 これから攻めるから理解しろよというつもりで奈由に好きだと告げた。


 ところが、邪魔が入った。

 あいつには付き合っている相手はいないと原口という親友から聞いていたのに、なぜか同級生という男が自分が彼氏だと俺の前で啖呵を切った。

 真面目そうなイケメンだ。奈由も否定しないところを見ると、一応両思いってところだな。

 だからなんだ。

 俺にとって、奈由はやっと見つけた唯一になれそうな女だ。

 悪いが、彼氏がいようがいまいが俺には関係ない。結婚しているわけでも婚約しているわけでもない。

 奪うまでだ。奈由は俺と相性がいい。話すと面白いのはあいつも気づいている。

 楽しみだ。俄然やる気がわいてきた。どうするか綿密に計算してやる。