詩乃は目を腫らした私を見て、驚くと家に上げてくれた。

 でも、夕方で赤ちゃんが泣いているので、彼女が赤ちゃんを寝かしつけている間に、私も洗濯物たたんだり、作りかけの料理を作ったりと色々した。

 やっと、赤ちゃんが寝てくれて、ふたりで食事を始めたときに、ブーブーうるさい携帯音を子供が起きると怒りながら詩乃が見た。

 「やばいよ、奈由。チーフからだ。何回も入ってる。探してるんだよ。連絡したら?」

 「……いいの。たまにはお灸を据えないと私の気持ち分からないから」

 「ここの住所知らないの?」

 「うん。引っ越す前なら知ってるけど」

 「どうしよう。来てないって連絡したらあとでコロされそう」

 「まだ、連絡来てないとか言っておいて」

 「……そうだね。うち、赤ちゃんいるし、そのことも伝えておけば探してくることはないだろう、ていうか。そんなんで、納得するとは思えないけど」
 
 「ごめんね。詩乃」

 「いいよ。私も結婚決めたって聞いてから話聞いてないし。おそらく大変なんだろうとは思っていたからさ」

 「……詩乃の言うとおりだった。本当に身分違いって大変だね」

 「……何よ、今更?分かってなかったとか言わないでよ?」

 「分かってなかったんだと思う。私が甘かった」

 「……で。ウチに来たのはその身分違いが原因なの?」

 私は、ありていに会社で聞いたことや、今まで詩乃に話していなかったことを話した。

 「馬鹿だね、奈由。まあ、奈由が腹の立つのも分かるけど、普段からチーフの言動見ていて、浮気なんてあるわけないじゃん。溺愛してるのわかってないの?マジで。晴人なんて、最初に会った時から威嚇されて結局怖がって奈由から逃げたじゃん」
  
 「……」