「奈由?おい、泣くなよ。ごめん、そんなつもりじゃないんだ。泣かないでくれよ」
涙が頬を伝うのを見て、達也君は仰天していた。
すぐに手を引いて抱きしめようとしたが、私は拒絶した。
「帰る」
そう言うと、鞄を持って、部屋を出ようとした。
鍵がかかって出られない。
すごい勢いで追いかけてきた達也君が、私を後ろから羽交い締めにした。
「ごめん。傷つけるようなことがあったなら謝る。信じてくれ。俺は奈由だけだ。知ってるだろ」
「……。ひっく。ひっく」
部屋に電話がかかってきた。
達也君は、私のことを離して、デスクの電話に出る。



