「うん。疲れました。私、考えなしだったかも知れない。先輩こんなにすごい家の人だったなんて。無理かも知れない」
すると、先輩が私の前に回ってきて、抱きしめ直した。
「……逃がすかよ。絶対離さないぞ。結婚いやだって言っても。この家がいやなら、家を捨てよう。お前は捨てない。絶対一緒にいる」
「……先輩」
「そうだ、指輪が出来てきたぞ。とりあえずお前につけてみたい。いいか?」
そう言うと、鞄を引き寄せガサガサして、素敵な正方形の箱を出してきた。
ドラマのように、パカッと開けて見せてくれる。
ひえー、キラキラしてる。こんな、おっきかったっけ?お店で見たときはもう少し……。
「どうだ?実は、お前と見て頼んだ後、父に聞かれて石の大きさ伝えたら、母から小さすぎると言われて大きいのに変えたんだ」
……はあ?なんですって?
手を取られて、薬指に入っていく大きな石のついた指輪。
何これ?え?もはや、自分の手ではないような。
「先輩。私、この家でやっていけるかな?」
「奈由。大丈夫だ。この家の奴らはみんなお前に会った時からお前が大好きになって、奈由病にかかってる。母さんまでお前のこと娘に出来ないなんてと父に食ってかかってた。お前には母が三人になる。実家のお母さん、叔父の奥さん、そして俺の母親。みんな、奈由のこと気に入ってる。何かあれば助けてくれる。何でも頼め。辛いことはすぐに言え。お前がいなくなるくらいなら、何でもする」



