「いやあ、でかしたぞ、奈由。あのグループの将来トップとの結婚なんて、しかも相手がお前ときた。宝くじが当たったようなものだ」
だから。ねえ。お父さん。私のこと心配じゃないのかな?
お母さんがテーブルを拭きながら、苦笑いしている。
「奈由。お前は割と頑固だから、彼の身分とかお金に惑わされて結婚したり、付き合ったりはしないだろうと思ってたの。それに嫌なモノは嫌ってそういうときはハッキリ言うし。とにかく、ご挨拶へ来られたときにお願いしたのは無理矢理どうこうするのはやめてくださいということだけよ。そうじゃなかったんでしょ?」
お母さん。わたしのことわかってるね。
「……そう。信じられないくらい待ってくれた。会社も変わるの許してくれた」
「ならよかったわ。おじいさまがおっしゃるには、おばあさまもかわいがって下さってるとか。そう言えば、ご両親はどうしたの?生きていらっしゃるんでしょ?」
そうなのよね。お兄様もいる。
なんだか、他の系列会社の社長がお父様。お兄様がその後継ぎ。
で、叔父さんがミツハシフードサービスの社長で、叔父さんとお父さんが兄弟とか言ってた。
叔父様にお子さんがいないからとかおじいさまは言ってたけど。
「もちろんよ。そうなのよね。そちらに挨拶がまだなの。ウチの後にするって言っていて。」
「ねえ、仲が悪いとかじゃないでしょうね。ドラマとかであるじゃない。お金持ちって相続争いとか遺産とか……」
「お母さん。それは考えすぎだと思います」
「そう?だって会ってないんでしょ。まあいいか、おじいさんが味方なら奈由が勝ちそう。」
……あのね。どうしてそうなる?
その後は、甥っ子の面倒をみたり、一緒にテレビを見たりしてお姉ちゃんと遊んであげている間に、時間が来た。
驚いた。噂をすれば影とはこのことかもしれない。
彼と一緒に、彼に似た鼻筋の通ったナイスミドルが一緒に来て、お父様だという。



