「ん、んんんー離してくださいまし私なんて

何の価値もございませんしマズイですわよ」



 マリアは、涙を流して震えてもしかしたらお化けかもしれないマリア一人では何もできないと

恐怖と情けなさで気を失いかけていると口を塞いでいる人物が。



「マ、マリア!私ですよ、ティカーです。子猫の声がしてここにきたんだが、驚かしてすみません。マリア嬢は何をしに此処へ」



 (ティカー様だったのね、びっくりしましたわ。髪を下ろしてらしゃるし色白だからお化けかと思ってしまいましたわ。男性なのに、びっくりするほど美しいですわね。ごめんなさい悲鳴を上げてごめんなさい)



 ティカーは、こちらこそ無礼をと謝るマリアをレディーの口を塞ぎおさえつけたのだから自分のほうが悪いとマリアの手首をさすって手首に治療魔法をかけてくれた。ほんわか手首が暖かくなって痛みが引いていった。



「私は、子猫が私の部屋に来たのでエサをあげようと。あの、手首ならもう大丈夫ですよ治療魔法ありがとうございました」



「しかしマリア嬢、結婚前の娘の手首なのですから傷が残ってはいけませんから。猫にエサをあの子はエサは三日に一回しかたべませんよ」



「三日に一回ですか!!まさかこの子猫って、魔物なんですのこんな愛らしいのに。魔物らしいとこはありませんのに、どっからどう見ても猫ですのに」



「おそらくはそうかと、でも怖がらないで下さいこの子猫いやルチアナは私が幼い頃から城の森で飼っているし一回も人を襲ったことがないので大丈夫ですよ。優しい子ですから」



「でも、魔物なんですからいつ本能にめざめるか。魔物に人間の愛情なんて伝わらないかと思いますわ残念ですが」



「ルチアナは、そんなことしません。

彼女は、私が幼い頃父上と兄上達を亡くし悲しみのあまり城を逃げ出して森で迷っていた時に出会いました。彼女のおかげで私は、悲しみを乗り越えられた。国のため泣くことも許されず王位をつぎ国を立て直す時も心の支えになってくれた」



「そんな事しらなくて、ごめんなさい。

ティカー様の大事な子猫を危険だとか言って、私何も知らないのに本当にごめんなさい。本に載っていた知識でティカー様の大事な子猫を敵にして自分が恥ずかしいですわ。早くルチアナを見つけましょう」



 子猫が逃げだしてマリアは、ティカーと一緒に城から抜けだし森へやってきたのだがそこには子猫を抱いたノア男爵令嬢が微笑んでいた。



 月明かりに照らされてノアの黒髪がゆれる、

子猫からマリア達へ視線を向ける彼女のブラックグリーンの瞳が怪しく光り真っ白なドレスが亡霊のようにふわりとゆれている。



「この子猫ね、実は私のなんですよ。聖女に使える聖獣なんですよ、今回はノアが断罪されちゃったから魔力を取られるなと思ってこの子猫に魔力を隠したんです。後で私が使うための魔力を」



「本当ですよ、まさかカズラール皇太子様の猫になってるなんて思ってませんでした。記憶を書き換えて飼い猫になり、二人を見張るなんてさすがノアの聖獣ですルシアンです。悪い子ですね、すっかり騙して私の元までつれて来るなんて後で褒美をあげますからね」



「ルシアン!、この子猫はティカー様のルチアナです。あ、貴女の聖獣なわけありません

嘘はやめて……この子は、ティカー様が辛い時側にいて慰めてくれたりした優しい魔物なんですよ」



「マリア嬢。離れてください、まさかルチアナが聖獣だったなんてエサをあまり食べないので魔物かと思っていたんですが。苦楽を共にしたペットが敵なんて悲しい話ですね。」



 ノアの腕に抱かれる子猫は、小さく震えている。子猫を撫でながら勝ち誇った笑顔のノアから子猫を、取り戻そうと手を伸ばしかけたのをティカーに止められる。



 マリアをかばうように立ち、ノアを睨みつけるティカーをノアは不機嫌そうに見つめ。

何かを思い出したフリをして、ティカーの後ろのマリアを見て話し出した。



「カズラール皇太子様、下がっていてくださいな何回も見てるだけだったんですから。今更助けても見捨てた事は消えませんわよ、それとも今回は一緒に消えていただきましょうか」



 馬鹿にしたような微笑みを浮かべてノアは、

ゆっくりと光の矢をティカーに向かって打ってきたマリアをかばうようにシールド魔法で貼るもティカーのシールドはあっさり破壊され

彼の腕からは血が流れている。



「何を言ってるんですか?それより、ティカー様に攻撃したことを謝ってください。ティカー様…ティカー様……血が出て、ノア男爵令嬢治療魔法を早く治療魔法を貴女は聖女なんでしょ

聖女なら困ってる人を救うべきです」



(ティカー様、ティカー様!血が止まらないわ。このクズ女何がしたいのよ、気が狂ってるわでも治療魔法はこの女しか使えないだから………。仮にも聖女なら救うべき)



「はぁ?助けないし謝らないわよ。ノアは、99回マリア様を消してきたの礼拝堂の屋根の十字架に吊し礼拝堂ごと燃やしたのよ。でも今回は、この皇太子に邪魔されたのノアの邪魔する

奴なんか助けないわよ。今回は、二人共消さしてもらうわ」



 ノアに向かってティカーの治療を呼びかけるマリアを、汚物を見る目でノアは拒否しながら近づいてきてティカーに蹴りを入れながらノアは高笑いをしながらティカーの頭を持ちあげて爪で頬をひっかいて私より悪役令嬢を選ぶクズ皇太子なんていらないのよと言った。



「仮にも聖女なのに、酷すぎます。誤りもせずにティカー様を更に傷つけるなんて主人公とか言われても私にはわかりませんし、興味もないですがティカー様を傷つけるのだけは許さない」



 ティカーを痛め付け続けるノアを近くに落ちていた木の棒に魔力を込めた剣で叩き払いのけるマリア、それでもなかなか攻撃は効かず

ノアに高笑いされるだけだった。



「今回は失敗したわ。まさか、カズラール皇太子が100回目で助けに来るなんて

予想外だったわ。苦労したわ今回は、でもね

今回もリアのために消えてマリア様。主人公はリアだけでいいのよ。悪役令嬢は消えなきゃ」



マリアは、ボロボロになり肩で息をしているティカーに覆いかぶさりノアから守る。ノアは、爪を噛みながら今度はティカーを守るマリアの頭を蹴る。



「無駄な抵抗はやめて下さい、マリア様。

本当なら主人公はノアなのに邪魔は最後にしてよ、このブス女そこの男と消えろ。ノアは主人公なのよ、今流行りの悪役令嬢が幸せになんてノアは認めないんだから」



 散々マリアを蹴飛ばして、長々苦しめていかせてあげるわと物理攻撃が続き。マリアを蹴飛ばしたり殴りながらノアは、幸せそうにしばらく楽しんでいた。



(い、痛いですわ。視界がもうろうとしてきましたし、このままだと私もティカー様も

この女に殺されてしまう。誰か助けて)



「い、いやー、ティカー様をこれ以上傷つけないでもうやめて………憎いのは私でしょ。ティカー様だけは助けてください」



 まばゆい光がマリアを包みその光からノアは、目をそらし苦しそうにもがいている。

ノアの光の矢は、光に溶かされて何の意味もなく消えていく。



「ルシアンあんたは、私の聖獣でしょ。獣ごときが邪魔してんじゃないわよ、主人公の仲間は主人公を守るもんでしょクズ」



 光の中に大きな獣の影が見えて次に視界が開けたときには、大きな獣に食いちぎられたノアの頭が足元に転がってきた。



「許さない………マリア私が主人公なのよ……」



ノアの首が口から長い舌を出しマリアの足をつかんで、光に引きずり込もうとしていたが獣が

ノアの頭を踏み潰した。残ったノアの体に攻撃されてもがきながら光と共にノアと消える獣は

にゃーとマリアとティカーを見て最後は子猫の姿になり消えた。



「ルチアナ!いやー、ルチアナやめて行かないでルチアナ」



 ノアとルチアナは、光がおさまると砂になっていた。マリアは砂を抱きしめ泣き叫びながら

力尽きて倒れてしまった。



 目が覚めるとプリシラが涙を流し、抱きしめて今までのことを話してくれた。



 あの後は、倒れているマリアとティカーをプリシラが見つけて他の者がそれぞれの部屋に運び医者を呼んだらしいがしばらく目を覚まさなかったらしい。



「二度と目が覚めないかと思いました、ティカー様は先に目を覚まされて酷く落ち込まれて部屋にこもられていらしゃいます」



 プリシラはずっと泣いていて同じ話を何回もしては、少し動くだけで

大騒ぎしベッドに押し込まれてしまった。



 解放されたのは、それから一週間後だった。



 何回もティカーの部屋を尋ねたが、部屋から出てこないしドアには鍵がかかっていて開かない。



 初めて来たときとは、違い城はいつも薄暗くいつも一緒にお茶をしていた場所も寂しげに見える。



 プリシラと食べるお菓子もいつもより美味しく感じず、苦みしか感じない。あれからルチアナの墓も立てた、砂を墓に埋めて花を添えて。



 マリアは、全身黒をまとってルチアナの墓の前で泣きながらマリアは悲しみと戸惑いにふけっていた。



「ルチアナ、私どうしたらいいの?」



どれだけ泣いたかわからないしもうルチアナは居ないのに、居ない者に頼りすがるなんて情けない話だ。



 (私は、何もできないのね。王妃教育を完璧にこなして、淑女の鏡なんて呼ばれて一人で身支度もできない女が人に守られて。どうお礼をしたり、慰めたらいいの?)



「開けて下さい、よかったら一緒にお茶をしませんか?」



 恐る恐るティカーの部屋のドアを叩いて

ドアのぶをひねるも、鍵がかかっていて開かないのでもう一度ドアを叩いて呼びかける。



「マリア嬢……。今は、貴女に合わす顔がない。お茶も要りません持って帰ってください」



 中から返事をしたティカーの声は、かすれていて元気がなく今にも消えてしまいそうな声だ。マリアが顔だけでも見して欲しいとドアを魔法で開けようとしても弾かれてしまうので

後日出直すことにした。

 

「今は、誰とも会いたくないのだと思います。助けられたから側にいるとか一時の想いなら今のティカー様にはいらないと思いますよ。

マリア様の実力ではあのドアは開かないと思います」



 ティカーの部屋のドアを何百回も叩き何日も通い詰めるも、マリアですら入れず食事もとらず重苦しい空気だけが続きマリアも気が滅入り出していた。食事だけいつも通りおいて長い廊下を歩いているとプリシラに呼び止められた。



「少し私達の昔の話を聞いてくださいませんか?…」



 涙をこらえ自分を責めているかのような震える声で、プリシラはぽつりぽつりと話し出した。自分ではティカーの気持ちに寄り添えないからもしこの話をきいてティカーを、拒絶して出て行くなら手を貸しマリアを忘れるとプリシラは言った。



「ティカー様は、実は99回もマリア様の死を見てきました。一度目にマリア様を亡くした時にティカー様は後追としましたことろに悪魔が舞い降りて過去に戻る力を手に入れましたが、助けられず80回を過ぎた頃からでしょうか。マリア様を攫ってこればいいと計画し今回の行動になりましたが、まさかまたノア嬢が現れマリア様の命があやうくなるたは予想外でティカー様はお部屋にこもられて……。」



 話終えたプリシラを大丈夫だと抱きしめながらマリアは何も知らなかった自分を呪うばかり

だった。ティカーの歪んだ愛を受け止められなかったが、彼の過去を知ることでなんで私を隣国までさらって来て自国に帰してくれなかったのかがわかった。マリアは、彼に守られてたのかって涙がでる何百回も婚約破棄されて断罪され国外追放されたり死刑台で斬首刑にされたりしたマリアを見てきたのだから少し気が狂うのもしかたいことだ。



 何百回も愛する人を亡くす気持ちなどマリアにはわからないが、今は消え入りそうなティカーが愛おしくてたまらないこの気持ちを彼に伝えたい。



「ティカー様、私は貴方が好きです。この100回目の人生は私を救って下さったティカー様に縛らる事にいたしますわ。だから貴方の人生を私にくださいませんか」



 マリアは、ティカーの部屋のドアに

何百回も弾かれるがマリアは何百回も

足に魔力を込めてなんとか蹴破ると

美しい笑みでやつれてボロボロな彼を抱きしめ

涙で顔をぐちゃぐちゃにして告白をした。

 

「目が覚めたのですか?、マリア!あの事をプリシラに聞いたのですね情けないまたノア嬢の接近を許してしまったのに私を愛して下さるんですね。情けない私ですが貴女を縛る事をお許し下さい愛してます過去も未来も、私の全てを貴女にさしあげます」



マリアの涙は美しい光になりティカーを包みこみあっと言う間に回復し数ヶ月後、結婚式の日になった。ティカーとお揃いのテイカカズラ花があしらわれた花嫁ドレスで彼の隣でパレードの馬車に乗る、ティカーが民衆が見てる中マリアの頬にキスをするとマリアは真っ赤になりうつむいた。



  ティカーによると、

『ルチアナがノアを倒し、彼女は光になりノアと共に消滅しました。私達の身代わりになってくれたルチアナの分も私達は幸せになりましょう』と言った。マリアとティカーを救ったルチアナを思うとマリアは、涙が止まらなかった。



「にゃー、こゃーご」



「この子猫は、もしかしたらルチアナの生まれ変わりかもしれません」



 庭で拾った子猫は、きっとルチアナの生まれ変わりだと思う彼女に似た白く美しい猫の魔物

その子はマリアとティカーの間に生まれたお姫様をじっと見つめている。子猫を抱きしめて、ゆっくりとマリアはいったのだった。



「ルチアあなたは、私達の子を守ってね

ティカー様とルチアナのように私達の姫の親友になってあげて下さい」



 子猫を抱きしめマリアの肩を優しく抱き留めて、微笑むティカーに赤ん坊がきやっきやっと

笑っている。



「この子達ならきっと大丈夫です」



 のちにマリアは、世界中で本当の聖女はノアではなくマリアだったと知られルチアナを抱いたマリアの像があちこちで立てられ。

聖女であり新たに生まれた王女も心優しい子に育ったため聖女改め聖母伝説が国に広まったのは別のお話である。