「お前のような醜い悪女とは婚約破棄を命じる!」


 婚約者のマントゥール・ファタール王太子の誕生日パーティーに婚約破棄を告げられた。

 「醜い悪女」と言われて立つのもやっとなくらい激しい、目眩がするが令嬢たるもの涼しい顔をしなくてはいない。だけど「殿下一言いいですか」と口を開けば私の方が悪者だと言わんばかりに怒鳴りつけられそうな空気だった。


 マリア・ゴールデンは、16歳の公爵令嬢

で、マントゥール・ファタールは同い年で

自国のネーヴェフルールの王太子だ。

どこにでもある王族との政略結婚で、私の

片思いの相手だっただけ。



 ゴールデン公爵家は代々王家と並ぶ、

名門貴族である。



 王と公爵は古くからの友人でお互いの子供が

生まれたら、婚約させる約束をするほどで

幼い頃から王宮に出入りしていた。王妃や王に

メイド達まで皆がみな「美しい」とか「妖精姫」

だと褒めるため誰からも醜いなどど言われた

事は生まれて一回もないと言う話だ。



 マリアにとって公爵令嬢としていつも凛としていたが、初めて会った王太子に一目惚れ

したのだが人見知りだったため一度も話した

事もなかった。挨拶や必要事項くらいの事しか

会話がなくいつも冷たい態度と視線のこの男を

ただ、純粋に無口な方だと思い込んでいた。



 貴族令嬢として自分からしつこく話をふったりなどは、一度もしなかったと思う。



 10歳になり正式に婚約が決まったときは、

喜んでいた仲良くなれば心を開いてくださると

信じていたから。でも違いましたこの男は正式に婚約者になってからは前よりも冷たくなり

何かあればマリアのせいにしていましたっけ。



 せめてこれ以上嫌われないようにと呼ばれぬかぎり姿を見せないようにすれば、冷たい女だと言われて次第にこの男への気持ちは冷えきっていました。だからか、王の命令だから側に

居るだけになっていきました。



 婚約者としての勤めはしっかりやっていたので、周りからはお似合いの二人と言われ憧れられていていました。執務の時だけは、この男も

優しくマリアに微笑んでいた。



 マントゥールは王太子であるのを鼻にかける

傲慢な性格で、国民からの信頼も薄いのが王と王妃の悩みの種だった。そこでかつての約束を

公爵に命じて婚約が決まっただのだった。



 マリアにとはまだ10歳だがしっかりと婚約者の勤めをはたしていたため、この男よりメイドや国民から好かれていた。それに貴族として

王族を立てる姿はまだ恋をしているのと勘違いさせるほどだった。



 婚約してから1年もたてばマリアは王妃教育に一日中部屋に閉じこもるように言われ、朝から晩までみっちり礼儀作法を叩き込まれる日々。空いた時間に学園で勉強し終わったら

また連れ戻されて品位を学びと休む暇がなかった。



 特にマントゥールは、マリアがお茶会に誘ってもいつも執務とお付きの執事が告げにくるほどに避けられていたのだった。だが誘いたくて誘うわけではないこれもまた婚約者の勤めだからだむしろ断られて嬉しいくらいだった。



 空いた時間ができたとマントゥールに断られた時間を、有効活用して本を読んだりしていた

が、マントゥールが時折八つ当たりにくるので

その度に機嫌を取り誤らなくていけないのは

苦痛だった。



 王妃からは、マントゥールに問題があっても

意見せずに機嫌を取りなだめなさいと申し付けられている。そんな申し付けに王妃は過保護だと思いながらも最初の半年は笑顔でたえていが。この男は機嫌を取れば調子に乗りまくるのだった。



「婚約者だから仕方なく顔を見に来てやったんだ、ありがたく思え」と言うのだ。



 なるほど、この男はあやされている自覚がなく調子に乗りまくり仮にも王太子として恥ずかしくないのだろうかと、マリアは呆れた。



 だが当時のマリアは我慢強くなくマントゥールへの不満や怒りを、兄に愚痴っていた。

そして兄からは日記を渡され、この魔法の日記に事細かく書くように言われて記録していた。

魔法の日記はその時の光景まで記録するすぐれ

物だった。



 だがマントゥールの事だ何かあればこの

日記すら嘘だと激怒するだろうと、兄に言われてあまりに酷いものだけ兄に話していたし、

王妃にもこの場合はご機嫌取りはできないと

話していた。王妃もまたマリアの意見を受け入れてくれたため苦痛は少しはマシになっていた。



 日に日にマントゥールの傲慢さが増した

記録を日記として報告されて、兄も母も頭を抱えていた。更に、王妃にも知らせたら頭を下げて謝れてしまったので気まずくなった。



 そんな訳で、マリアはマントゥールの言う

ところの「醜い悪女」もいつもの事だと思っていた。



 とりあえずなだめて、機嫌を取りして婚約に

関しては破棄でも構わないのだが、何故私は断罪されそうになっているのか教えてほしいですわこのアホ王太子に。



今宵は王太子の16の誕生日を祝うための夜会が開かれ、マリアはいつものことながら呼ばれるまで待機をして、メイド達と王妃による

ドレスの確認と談笑をしていたところ、

一人の令嬢に悲鳴を上げられその後ろから

すごい形相で現れたマントゥールに頬を叩かれた。



 そこで冒頭の台詞が飛び出した。



「お前のような醜い悪女とは婚約破棄を命じる!」



 何故いきなりこんなところで、王妃の隣で訳のわからないことを言い出したのか。



 驚く王妃と呆れるマリアはため息をつきながら、この自体をどうただそうかと頭を悩ませていたら、マリアを娘のように可愛がる王妃が

「そんな権利はあたえていません」と王妃が口をはさんできたのでマントゥールは下唇を噛みながら睨んできた。



 (睨まれても意味不明な罵詈雑言と行動を、注意されるのは自業自得だ!)



 「殿下、一言いいですか。マントゥール

王太子殿下は、何故私と王妃様の談笑をわっては入り罵詈雑言を吐かれたんですか?」



「恥ずかしい息子だこと、貴方にはがっかりしました」



「王妃様」



 マリアが王妃を止めながら、チラリとまだ

下唇を噛み睨むマントゥールは冷たい声をさらに凍らせてさきほどより大袈裟に制した。

集まってきた客はマリアではなくこの男を睨みながら私と見比べていた。

(まぁまぁ、後が大変になりましたわね!)

 理由がわからないこの男の言動や行動はいつもの事なのだが、今回の罵詈雑言と王妃を無視する行動は何事だろう。


(この馬鹿は、なんて顔してますの。悪童なだけありますわね!)


「マリア!公爵令嬢ごときがなぜ、
王族気取りで王妃をエスコート役にし
パーティーに出席している
そんなに俺の気を引きたいのか醜い女め!?」

「えっ、そんな事してませんわ」

「白々しい奴だな!この醜い悪女め!
そういう人を馬鹿にした顔が醜いのだ化けの皮を剥がしてやろう!母上いえ王妃よ!マリアは俺の婚約者だからと王族気取りで王妃をエスコート役にして王妃と長時間談笑しかも!彼女はもう王族気取りでこのノア・ブジャルド男爵令嬢を名をからいで見下して嫌がらせをしたのです!これが醜いのではないなら何と言えばいいのですか!
はやくこの女を断罪するべきです」

(醜い悪女の理由がそれね、馬鹿らしい!)


「まぁ、驚きましたわ。そちらのご令嬢に嫌がらせをした?名前も知らないご令嬢にですか」

 マリアは意味不明な話に思わず言い返してしまった。


(意味不明な言動と行動とさっきから私からそちらの令嬢を守るように構えて立つのは、あんまりじゃないかしら?)


 婚約者のエスコートをしないで他の令嬢を連れてきて王妃様の前で頬を叩くなんてあんまりではありませんか?それに私は指示道理に待機していただけで、この夜会でも学園でも四六時中護衛に監視しされでいるのですが。