「……すごい、あっという間に一件落着してしまったわ」

 パメラは感心したようにぽつりとつぶやく。鮮やかな手腕は、さすがこの国の宰相というべきか。
 ハルベリー伯爵は深々とため息をついたあと、もう一度、力強くアルベルティーヌを抱きしめる。

「ああ、アルベルティーヌ。すまなかった。あの馬鹿王子から徹底的に身を隠すため、護衛も召使いも最低限でこんな辺鄙な田舎に身を隠してもらった。しかし、結局はこんなことになるなんて……。辛い思いをさせてすまない」
「お父さま、大丈夫です。パメラさんが守ってくれましたもの」
「ああ、そうだな。パメラとやら、礼を言わせておくれ。王子を相手に、あの堂々とした物言いをするとは、心底感服した。アルベルティーヌは素晴らしい友人を得たようだ」

 ハルベリー家のやたら顔が派手な親子から、キラキラとした目で見つめられ、パメラは引きつった笑みを浮かべる。

――これは口が裂けても『自分のために王子に喧嘩売った』なんて言えませんわ!

 このことは墓まで持っていこうと決意したパメラだった。特にこのことが彼女の父親に知られた場合、謹慎期間が延長しかねない。
 ハルベリー伯爵は軽く咳払いをした。

「しかし、今回の一件であの王子は自滅したも同然だ。お前にとっては良かったかもしれぬ」
「……ついに皆様の前で、殿下を弾劾するおつもりなのですね」
「ああ、それなりの処遇を要求するとしよう。これまでの恨みつらみ、徹底的に晴らしてやるつもりだ。国のためだと長年我慢しておったが、儂の可愛い一人娘をここまで愚弄した罪は重い」

 ハルベリー伯爵の薄い唇に冷笑が浮かぶ。眼が全く笑っていないので恐ろしい。パメラは、ロバートの行く末はあまり考えないことにした。