パメラが抗議している相手は、畏れ多くもこの王国の王子である。もちろん、パメラのようなしがない男爵家の娘が気軽に意見して良い相手ではない。
しかし、パメラは必死だった。
――ここはなんとかアルベルティーヌさんを思いとどまらせなくては!
アルベルティーヌが首都に帰ってしまえば、困るのはパメラだ。
この屋敷から出てまたあのあばら家に戻らないといけなくなるし、狩りも食料確保も一人で行わなければならない。その上、アルベルティーヌの刺繍はわりと評判が良く、良い臨時収入になっている。この収入がなくなるのも、パメラの生活の質にとって大きな痛手だ。
パメラは、アルベルティーヌにはなんとか田舎暮らしを継続してもらわなくては困るのだ。少なくとも、彼女の謹慎が解かれるまでは。
だからこそ、彼女は全力で王子を否定する。――そう、ありていに言えばパメラはアルベルティーヌを庇う体で、足を引っ張ろうとしているのだ!
彼女は根っからの悪役令嬢。人の足を引っ張ることにはとりわけ慣れている。
その上、彼女の評判はすでに地の底。追放された悪役令嬢に、もはや失うものなど何もないのである。よって、相手が第一王子だろうがまったく怖くない!
パメラ・ファルーヴは無敵の人であった。
極めつけとばかりに、パメラはロバートをキツい切れ目で睨めつける。
「ねえ、先ほどまでの言い方から判断するに、貴方はアルベルティーヌさんを役に立つ道具としか思っていないでしょう?」
「なっ……」
「それに、ミニュエットとかいう女に誑かされたとおっしゃったかしら? そのくせ、どうして殿下は彼女の処遇についてお話しないのかしら? もしかして、ミニュエット嬢とはそのまま関係を続けて、実務的なことについてはアルベルティーヌさんを体よく利用しようと思っていらっしゃるのではなくて?」
「……う、うるさい、うるさい、うるさい! お前に何がわかる!」
「なにも分かっちゃいませんわ。だって王子さまなんて今日初めてお会いしましたもの!……でも、貴方が自分のことばかりお考えになっているのだけは、まるっとお見通しですわ!」
シン、とあたりが静まり返った。
ぴちち、と小鳥が鳴く声だけが辺りにこだまする。
しかし、パメラは必死だった。
――ここはなんとかアルベルティーヌさんを思いとどまらせなくては!
アルベルティーヌが首都に帰ってしまえば、困るのはパメラだ。
この屋敷から出てまたあのあばら家に戻らないといけなくなるし、狩りも食料確保も一人で行わなければならない。その上、アルベルティーヌの刺繍はわりと評判が良く、良い臨時収入になっている。この収入がなくなるのも、パメラの生活の質にとって大きな痛手だ。
パメラは、アルベルティーヌにはなんとか田舎暮らしを継続してもらわなくては困るのだ。少なくとも、彼女の謹慎が解かれるまでは。
だからこそ、彼女は全力で王子を否定する。――そう、ありていに言えばパメラはアルベルティーヌを庇う体で、足を引っ張ろうとしているのだ!
彼女は根っからの悪役令嬢。人の足を引っ張ることにはとりわけ慣れている。
その上、彼女の評判はすでに地の底。追放された悪役令嬢に、もはや失うものなど何もないのである。よって、相手が第一王子だろうがまったく怖くない!
パメラ・ファルーヴは無敵の人であった。
極めつけとばかりに、パメラはロバートをキツい切れ目で睨めつける。
「ねえ、先ほどまでの言い方から判断するに、貴方はアルベルティーヌさんを役に立つ道具としか思っていないでしょう?」
「なっ……」
「それに、ミニュエットとかいう女に誑かされたとおっしゃったかしら? そのくせ、どうして殿下は彼女の処遇についてお話しないのかしら? もしかして、ミニュエット嬢とはそのまま関係を続けて、実務的なことについてはアルベルティーヌさんを体よく利用しようと思っていらっしゃるのではなくて?」
「……う、うるさい、うるさい、うるさい! お前に何がわかる!」
「なにも分かっちゃいませんわ。だって王子さまなんて今日初めてお会いしましたもの!……でも、貴方が自分のことばかりお考えになっているのだけは、まるっとお見通しですわ!」
シン、とあたりが静まり返った。
ぴちち、と小鳥が鳴く声だけが辺りにこだまする。

