「振られたんだな……」



一瞬で恋をして一瞬で振られた。


入学式早々から何をやっているんだろう。まだ名前も知らない彼のことを好きになって。勝手に振られた気になって。


好きって気持ちはまだ芽生えたばかりなのに。


声すらも聞いていない。


なのに……



「振られちゃったぁ……」



涙が次から次へとあふれて止まらない。こんな気持ちは初めてだ。誰かを好きになったことはもちろんあるけどこんな苦しい気持ちになったことはない。


気づいた瞬間私は振られた。


だってわかっちゃったんだもん。彼はあの子が好きなんだって。



「ふぅ、ヒック……」



その日はひたすら泣いた。


名前も知らない彼に恋をしたこと、振られたこと、ドキドキしたことも忘れようとしたけど無理だった。


忘れようとするほど思い出してしまって。


諦めきれなかった。


諦めるって……何を?