数十分後。ふたりは食堂へと向かっていた。
「なんにしようかな〜。カツ丼、ラーメン、唐揚げ定食……」
「ちょっ、朝ですよ? そんなの食べられます?」
「えー、俺、全然いけるけど」
「浅利くんって、すごいですね」
呆れ気味につぶやく。すると圭吾は急に駆け出し、恵奈の前に立ちはだかった。
「え? なんですか? 浅利くん……」
「それ! 浅利くん、じゃなくて。圭吾って呼んでよ」
急なことに、恵奈は目を丸くして息を呑む。
男の人を下の名前で呼ぶなんてあの人以来だ。
「圭吾、くん」
「うん。オッケー」
圭吾は上機嫌に、また歩き出した。
こうしていると、自分が本当に圭吾の彼女になったみたいで。
恵奈は高揚する胸を抑え、圭吾のあとを追った。

